質問
小杉先生少しややこしいのですが質問させてください。
以下、甲:相手業者、乙:●●(本人)とします。
物件は17坪ビルテナント、平成11年5月10日開業の●●科医院です。
平成11年2月12日基本的にバリア・フリーで造るということで500万円(X線室含まず)で甲との内装工事契約を行う。この際細々とした要望を伝えるが、甲は全て乙の都合のよいように造るので任せろと書面による確認を行わず。
工事開始、床の支柱、床板は頼りない木材で構成→院長は若いこともあり医院としての耐久性を問うが、補強を入れながら造るので2、30年は全く問題ないと返答。
また土間から約15cmの高さの床を張られる。→バリア・フリーではないと指摘するが、今さら床を下げられないのでスロ―プや手すりを付けたりして工夫すると回答。
3月10日頃になっても床と骨組みだけで工事は遅々として進まず、不況による経営上の問題で材料等が買えず工事が進められないとのことで中間金100万円を要求される。(契約上は着手金250万円、完成検査後250万円)医療機械の搬入、放射線測定を行った後4月1日保健所へ開業申請を行うこと、また早く諸用を済ませて開院前に新婚旅行に行きたかったため早急に工事を進めるよう要請し中間金を払う(3月18日)が、100万円を払うと工事のスピードがまた下がる。
何事も相談せずに勝手に事を進め、様々な不具合があり再三修正を促すが、とりあえず使ってみてくれと言ってほとんど直さない。また工期も17坪なので誰に聞いても約1カ月くらいと言っていたが、遅々として進まない。
4月おおまかな工事が終了したところで甲がいろいろと経費がかかったので残金とさらに20万円余分に欲しいと言ってくるが、何の相談も計画性もなくやたらと工期を延ばすため人件費などのよけい経費がかかり、工事内容もこちらの意図を汲んでおらず、工事が終わらないうちはお金は払えない旨伝える。
開業直前になっても様々な問題点があり指摘するがすぐに直さない。
開院後も自動ドアは設定が悪くご老人を挟みかけるなど支障をきたす。土間から約15cmという床の高さは高齢者には高すぎ、やはり使用しづらい。またてすりも結局つけていない。また初めから自動ドアまわりには明らかな隙間が多く風が吹き込む。
棚の使い勝手に不具合があり開院1週間後に取り替えてもらうが、この際医院の休み中に関係者のいない間に入って工事をして帰っており、結局鍵は返してもらっていない。
最低限診療できるだけの修正が済んだところで、契約額面通りの残金150万円を振り込む(6月3日)しばらくして各修正などにかかった分20万円をさらに払えといってくるが、いろいろな問題が山積し解消されず、追加修正されたものもあるが、余分なものや削除されたものも多く、初めに申し伝えたバリア・フリーの概念からはほど遠く乙の指示通りに仕上げていないこと、使用している材料等不安な部分が多いため、乙はこの時点では甲の要求通りの20万円を払えないと判断し、その旨も伝える。
開業後1カ月で診察室の床の一部にバキッという大きな床鳴りが発生。甲はときどき経営が苦しくなると不況でお金のやりくりに困っているので20万円を払えという電話をしてくる。→この際床のクレーム、すでに乙が支払った分の領収書がもらえていないことを訴えるが、領収書は今度切ると約束、床はわかりましたと答えるが、結局何もしにこない。10月初め机の下の床が陥没し出す。音をたてていた診察室の床には軋みやつなぎ目でのうねりがみられだす。10月末電話で床のクレーム、領収書、鍵をまだ還してもらっていないことを訴えるが、やはり何もしない。
自動ドアの隙間の処理をしていないため、冬になると冷たい風や落ち葉が舞い込む。11月初診察室の床のクッションフロアが剥離、壁紙も一部剥離11月24日消費者生活情報センターに相談、支払った残金250万円の領収書、預けてある鍵を第三者として要求してもらうが20万円を払わなければ何もしないと。
診療上麻薬を使用する必要性が生じるが、工事関係書類がないのでX線装置の床下の配線がわからず、麻薬取締り法で定められた麻薬保管用の金庫の固定が行えない。
11月25日付けで床の補償、領収書、鍵の返還、工事関係書類の引き渡しに関する書面を内容証明でつくり速達で送る。12月1日工事関係書類はないという回答。12月初めさらに診察室の別の部位の床が陥没し出す。以後は何を言っても無視しております。
現存ずる瑕疵として開業前に既存または指摘しても直されていないもの:
自動ドアの明らかな隙間(締め付けの悪さ)、設定が悪くよく人を挟む、土間の縁の木材の損傷、天井の未補修、患者にみえる部位の下水等配管のいい加減な処理、暗室の光漏れ、ドアの開閉装置がついていないためにあいた壁の穴開業後出現・進行するもの:診察室の床の陥凹、床・壁材の剥離があります。
大きな問題としては私の指摘通りになった脆弱で進行する床の陥凹です。
医院を移してその間に修繕するといってもかなり難しいので、理想的には甲に将来的にきちんと補償されるのが理想ですが、全く誠意がみられず関係書類等かなりいい加減であるため十分な補償は望めません。
20万円が払えないわけではないのですが経過から明らかなように甲の言う通りの20万円を払ったとしてもきちんと仕事がなされる保証はどこにもありません。
従って現実的にはどれだけ損害賠償を負わせその賠償で他の業者に修繕させられるかだと思いますが、裁判を起こす際に床の陥没や構造などを証拠におさめるにはどのような方に頼めばよいのでしょうか?
またどうすることが一番手っ取り早いのでしょうか?
長くなりましたがどうぞ宜しくお願い申し上げます。
回答
<はじめに: この回答はご相談のあった2000年3月に
すでにご相談者あて回答したものですが、
当相談コーナーのシステム改善の都合上、
再度編集して掲示しております。ご了承ください。>
あなたほどの学識経験者が何の書面にもよらず
相手の言いなりになって工事を進めてしまったところに
そもそもの欠陥発生要因があります。
一般的には第三者による設計監理者が介在すれば
事前の確認が図面上で行え、初期の段階で
バリアフリーの検討なども十分できたでしょうし
その図面に基づいて工事も進行したわけですから
問題も起こらなかったと思います。
また、施工者はどなたが選定されたのでしょうか?
施工者選定に関しても単なる評判や知人の紹介だけでは
その能力の是非はわからないことが多く
固有の条件下での施工は得意でもそれ以外のことは
まるで駄目というケースは多々あります。
また、その施工者を選定しても
その先の実際に工事を担当する職人がどうなのか?
どのように作らせどのように完成させるのか?
その手法とストーリーをきちんと指示しなければ
仕事事態が形骸化してしまいます。
そうした検証はどなたがなさるのでしょうか?
現場の監督ですか?
工事会社の社長ですか?
それは否です。
彼らにはその能力はありません。
つまり、あなたは単に500万円という対価で
望みの商品を手に入れようとしたわけですが
その商品の中身を一切検討検証せずに
完成商品としてのこのプロジェクトを手に入れようとしました。
建築において口約束でそれは可能なことでしょうか?
口約束では
どこまでいってもあなたの注文は達成できません。
それから
相手に落ち度はないのか?という点ですが
当然契約上のプロジェクトは達成していない
(不具合があって手直しをしなければならない事実がある)
のですから対価を支払う必要はありません。
口答であるにせよこのプロジェクトは甲と乙との約束です。
約束は約束ですから成就されない部分に対しては
不服を申し立てることができます。
ただし、契約書面がないのですべて甲と乙との協議によらねばなりません。
それが達成できないからといって「内容証明」では協議ではないのです。
そもそも契約書類がない状況ですから
工事書類の作成もないわけで、どんな検証もしようがないのです。
検証のしようがないので
検証を誰かに任せねばなりませんが
これは弁護士さんに登場願うしかありません。
総括的にいいますが、
有名な山の頂上に立った自分をイメージすることはできていますが、
事前準備を行わずに無謀な登山をして遭難した場合
救助はされても生還後の救援者への始末は大変なものがあるのです。
酷なようですが
それほど事前準備が必要だったにもかかわらず
それを怠ったあなたご自身の責任はどこかでとらねばなりません。
かくして弁護士に支払う金銭的解決ということになりそうです。
事前に建築の専門家に相談するべきであったか
事後に弁護士に相談するしかないということか
同じ費用が発生するとすれば
最良の方法として前者を普通は選択するでしょう。
それができない以上誠に残念ながら後者の選択しかありません。