質問
はじめまして。ご相談にのっていただきたく、お便りさせていただきます。私は、新潟市に完全分離型二世帯住宅を新築したいと思っています。地下室は土地の有効利用という点としっかりした基礎を兼ねることができるという点で、積極的に検討したいと思っています。
土地を購入予定地(現在地盤調査等をやっております)は、第一種低層住宅地域に指定され、建ぺい率50%・容積率100%です。高台にあり地盤は砂地、2面が4m程度の擁壁に接しています。土地の広さは約120坪で、3m道路の袋小路の突き当たりに位置しています。土地と道路の高低差はありません。ご質問したいことは以下の6点です。
1)この様な制約のある土地にも地下室を作ることが可能でしょうか。
2)当地は、冬に降水量が多くなりますが、結露などの湿気の問題はクリアできますでしょうか。
3)設計を貴社にお願いし、当地の施工業者さんに施工してもらうようなことが可能でしょうか。施工業者に設計の意図が伝わるか不安があります。
4)道路との高低差がない場合、ガレージを地下に作ることが可能でしょうか?
5)寒冷地のため、高気密・高断熱の住宅にして、計画換気システム(第三種換気)をつけようと考えています。地下室の換気は、どのようなものが望ましいのでしょうか。
6)設計を設計事務所にお願いすると、ハウスメーカーでの建築はむずかしいと考えてよろしいでしょうか。ハウスメーカーは、おしなべて設計から施工までを一括して行うことを条件とします。
以上、お忙しいところ恐れ入りますが、お教えいただけると幸いです。なお、建築についての相談相手については、●●ハウスのほか、地元の建築業者さんに数社あたっております。
回答
<はじめに: この回答はご相談のあった1999年5月に
すでにご相談者あて回答したものですが、
当相談コーナーのシステム改善の都合上、
再度編集して掲示しております。ご了承ください。>
>ご質問したいことは以下の6点です。
>1)この様な制約のある土地にも地下室を作ることが可能でしょうか。
上記地盤調査の結果はおそらく地表面下1m程度のところまでのデータと思われます。(ハウスメーカーのサウンディング調査ではありませんか?)
地下の建築に当たっての要求データは少なくとも地下10m程度
までのものがないと判断できません。
砂質地盤となるとその周辺の地層構成からの判断が重要なのです。
地上建物だけの場合とは診断に至る手法から違ってきます。
「地下室はシッカリした頑強な基礎を造る」ことなのです。
したがって周辺のデータを含めて今回の敷地を調査しなければ
地下室が可能かどうかの判断できません。
こうした砂地ではなおさらのこと
できるだけ大きな地下室などを造って
重心を低くすることで転倒を防止することが大切でしょう。
>2)当地は、冬に降水量が多くなりますが、
結露などの湿気の問題はクリアできますでしょうか。
機械に頼ることになります。
除湿機。及び換気装置がその問題を解決します。
>3)設計を貴社にお願いし、
当地の施工業者さんに施工してもらうようなことが可能でしょうか。
施工業者に設計の意図が伝わるか不安があります。
地下室だけの設計に関しては上記のノウハウが
地上建物の業者に盗まれる危険があります。
目下、特許等での拘束も検討中ですが間に合っておりません。
従いまして、地下室単独でのご依頼はやや困難です。
地下室+地上階建物としての一体建物の場合にはご予算等全体計画を含めてご相談に応じております。
>4)道路との高低差がない場合、ガレージを地下に作ることが可能でしょうか?
スロープ式か機械式になるかと思いますが可能です。
工夫する知恵が必要でしょう。
>5)寒冷地のため、高気密・高断熱の住宅にして、
計画換気システム(第三種換気)をつけようと考えています。
地下室の換気は、どのようなものが望ましいのでしょうか。
同様のものが必要です。
第1種換気が理想です。
当社ではハウスメーカー主導の高断熱・高気密とは異なるパッシブな
換気システムを提案しています。
>6)設計を設計事務所にお願いすると、
ハウスメーカーでの建築はむずかしいと考えてよろしいでしょうか。
ハウスメーカーは、おしなべて設計から施工までを一括して行うことを条件とします。
設計から施工までを一貫して行うほとんどの場合
すべてが「お任せ」になり易い分、「工事費の内訳」が見えません。
また、グレードやランク設定で商品構成が事前に決定されておりますので
選択肢が少なく、違う要望を出したところからすべて「オプション」になってしまいます。
したがって、後から出てくる追加工事費の内容は
300万円の追加なんて普通のことのようですが、私たちはこれに疑問を抱いています。
設計とは「予測」です。私たちはお客様の「満足」を追求するべく予測をたてねばなりません。それだけ選択肢が多くなりますからすべてについて判断しなければなりません。お客様に代って選択肢を抽出し、わかりやすく説明し、納得していただく必要があります。それが設計する側の立場だと考えています。
しかしながら、ハウスメーカーの設計は「自社商品の組み合わせ」です。設計というよりはパズルの組み合わせのようなものです。ですから一般的なものは設計しなくても「営業マンが部屋同士を組み合わせれば間取りが出来上がるようになっている」のです。これは設計ではなく「間取りパズルの組み合わせ」です。
ハウスメーカー営業マンは自社商品の教育を受けていますのでそれら商品に対しては認識は深いのですが、他社の建材や商品についてお客様から質問されるとよほど勉強されていれば別ですが、知識不足のことが多々あり、知りませんとはいえないので、必ず「その商品はやめた方がいいですよ」と言います。また、他社商品については高い価格を提示して自社商品の優位性を推奨します。
一般的ではないお客さま先を訪問する場合は、営業マンは設計士と組んで行動せざるを得ません。営業マンは「お客様窓口」となり、設計士は「営業マンの窓口」となって説明することになります。
当然、担当ごとに経由することが多くなる分、連絡ミスやトラブルも多くなります。これは工務店や施工会社も同様です。
>以上、お忙しいところ恐れ入りますが、お教えいただけると幸いです。
>なお、建築についての相談相手については、●●ハウスのほか、地元の建築業者さんに数社あたっております。
たとえて言うと「医師と薬局のポジションの違い」に似ています。
医師が設計事務所で薬局がハウスメーカーや工務店でしょうか。
市販薬を患者が選ぶのは勝手です。
薬局は簡便な診断はするとは思いますが、患者の容体を聞いて
薬局が処方を勝手に作って、かってに薬を出してしまうのと変わりません。
(医師法や薬事法ではありえない話しだとは思いますが)
今まで多くの「住まい」はこうしてつくられてきました。
その結果、日常ニュースなどでの「住宅問題」が発覚してきています。
やはり処方を作るのは医師であるべきだと私は思います。