質問
築29年の木造2階建てです。
電話にて無料耐震診断のセールスがあり、受けたところ精密診断の必要があるということで有料3万円で行いました。
その調査はなかなかしっかりしていて1階、2階をメジャーではかり、天井や床下も写真撮影して、筋交いの有無なども調べその写真(20枚以上)と、家屋の現状についての見取り図、および耐震補強工事の設計図を渡されました。
もともと中古住宅を購入し、前の持ち主が増改築しておりさらに購入時にも自分たちでリフォームしており新築時の図面しかなかったので詳しい図面がほしかったのでこれには満足しています。
精密調査の結果補強が必要だといわれ、基礎と柱を接合する金物4本、耐震合板3箇所その他で270万円といわれました。工事はいったん壁をはがし、補強工事を行い、壁を元通り復元するためこの価格だということです。
この工事費は妥当な金額でしょうか?
素人目には技術のしっかりした業者に見えますが、なにぶん無料診断の電話勧誘というのがきっかけですのでいまひとつ心配です。
回答
耐震補強工事費としては補強工事内容からして高いと思います。
最近では全国の建物の耐震化率はかなり上がってきましたが、それでも木造住宅の築年数が昭和時代の古い建物で耐震診断を行っていない建物のほとんどは「精密診断が必要」です。
新築建物であっても設計者や監理者が介在しない「建売住宅」や昔ながらの大工さん主導の住宅はこれに含まれます。
根底には昭和56年6月(1981年)に構造上(旧基準)の耐力計算の根本的な考え方が変わりましたが、この改正は昭和53年(1978年)に起きた宮城県沖地震を受けて建築基準法大改正となっています。
同様に、平成7年(1995年)に起きた阪神淡路大震災での破滅的建物倒壊状況の教訓を5年の月日を以って耐震強化策として平成12年(2000年)に大きく改正しました。
つまり、金物で木造(在来軸組)建物の骨組みを接合してあげることが絶対条件(構造的に評価された他の構法は除く)になったのです。
ですので、現在ほど金物が使われていないことが分かれば平成12年以前の建物もこの対象とした方がよいくらいですし、技術的にも安定するまでの平成17年(2005年)くらいまでの建物も安心してはいられません。
ですから旧基準で建てられている建物は現行の基準には合っていませんので不安要素はあります。
ご相談者の建物の場合も「該当」してしまいます。
まとめますと、昭和56年に耐震性基準が強化され耐震構造のハードルが高くなってしまいました。
また、2000年6月以降でさらに新基準に変りましたのでこれ以前の建物はまたしても見直しが必要になりました。
法律や基準はどんどん変っていきますので過去の建物はすべて取り残されていきます。
東西南北4面のうちの1面または2面に極端に窓などの大開口が多いなどの店舗向けなどの建物を除けば、新基準になったからといってその建物が簡単にペシャっと倒壊するほどに壊れることはありませんのでご安心ください。
ただし、大事なのは「日頃の手入れをしているか否か」によってその安心度は減ります。
さて、精密調査の結果、補強が必要だといわれ、基礎と柱を接合する金物4本、耐震合板3箇所その他で270万円といわれた件に関してです。
工事はいったん壁をはがし、補強工事を行い、壁を元通り復元するということですがこの金額は高いと思います。
ざっと見積もっても
基礎の金物緊結も含め構造用合板下地の外壁交換3箇所でしたら80万円~90万円程度です。
基礎自体を補強・強化する工事や屋根材を瓦を降ろして金属瓦に葺き替え変更するなどの工事を含んでいれば別ですが、基礎との主要柱の緊結が外部で、内壁をいじらずに外壁だけの工事であれば270万円もかかることはありません。
一部壁を耐震補強することも必要ですが耐震化を見直すのであれば
全体を見直す必要があるのですが、そのような精密診断結果ならびに補強設計なのでしょうか。
270万円あればある程度の部屋数のリフォームを含めた耐震補強までできると思います。
弊社でも先日この種の耐震補強リフォーム工事をいたしました。
約45坪の木造2階建住宅ですが耐震補強と全面リフォームを行い、床下に断熱材を入れて屋根も軽量瓦に変えて約250万円程度(「耐震診断料」「精密診断料」「補強設計料」「その他コーディネート料」は含まず)の工事でした。
この建物は新築時に工務店主導で建てられた住宅を中古物件として購入されたお客様からのご依頼でした。
全室の点検を行い、畳の交換と壁紙の張り替え、床下断熱材の新設や浴室タイル割れ部分の交換や換気扇の新設、浴室暖房乾燥機など多面的に再検討して導入しこの金額に弊社がまとめています。
まとめますと、
3万円で間取図が入手できたということでのご満足はそれとして、そもそも耐震精密診断は3万円ではできません。
規模や地域にもよりますが15万円~25万円程度はかかります。
耐震補強工事が270万円になるくだりは「いい加減」と判断いたします。
また、外部の構造壁を変更した場合、防水の問題や新旧での壁の歪から亀裂が生じたり雨漏りが発生したりと逆に問題が起きることもありますので注意が必要です。
木造住宅の耐震診断は弊社(登録:東京都木造住宅耐震診断事務所・技術者第750号)も行っておりますので、ご不安でしたら引き続きご相談ください。
以上となりますが、ご不明点や解決がみられないなど何かお困りごとがございましたら引き続きご相談ください。
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