<はじめに: この回答はご相談のあった1999年4月に
すでにご相談者あて回答したものですが、
当相談コーナーのシステム改善の都合上、
再度編集して掲示しております。ご了承ください。>
かなり専門的で高度なご質問ですので
こちらからの回答は的を射ないかもしれません。
また、回答には手厳しい指摘もありますが
真意をお伝えしたく思いますのでご容赦願います。
まずはじめに
建築における非常時は地震と火災です。
人的被害をもたらすものと考えればこの2者が非常でしょう。
こうした非常時の防災に関してはどちらもやらねば成らない事ながら
おのずと優先順位が生じています。
つまり、防災への取り組みが行政サイド先導がゆえに
公共性の高いものから手をつけられていくのが順序となって
私的な住宅は一番最後になっています。
ですから、人が多く集まるところの建築物の仕様は
かなり厳しいものがありますが住宅となると甘いのが現状です。
さらには、こうした建築に遣われる建築資材は時代と
日進月歩で変化しており、その新製品に対して
防災(防火)認定品への位置づけは遅れてしまいがちです。
すなわち、公共性の高いところではこの防災(防火)認定品
以外のものは使えません。
住宅の規模でこの内容を加味して、できないこともありませんが
コストパフォーマンスは非常に悪いものになってしまいます。
初期火災の30分に全員が避難し得る状況を想定すれば
公共建物と住宅とでは何を優先すべきかがお分かりになるでしょうか?
ご質問の内容は
建築資材自体を取り上げれば性能評価という点で
断熱試験や強度試験や燃焼試験という幾多の試験を経て、
その結果がどのように出ているのか?ということなのでしょうが
前述のごとく、防災(防火)認定品となるもの、
つまり石油からできているもの、成形されたものは
基本的に合格しないのです。
それを、メーカーに聞いたところで
採用の目的とその成分とが別の指向性を持つものですから
回答を得ないのが実のところでしょう。
石油製品に向かって「何故耐火にならないのか」と尋ねているようですが
これができれば画期的な発明でしょう。
したがって、ご希望の内容で断熱材を検討するのであれば
不燃製品をベースに考えるしかありません。
回答はひとつ「ロックウール」です。
グラスウールはガラス繊維ですので高温では燃焼してしまいます。
燃えればガスが出るのです。
「ロックウール」はかねてより公共建物にも採用されてきました。
歴史的にも古いのですが、近年環境問題を唱える人から問題を提起され
間違った過度の情報として「発癌性」を流布されましたが
グラスウールほどではないのです。
火に強く、吸音や空気層を形成できるための断熱材として
また、比重も重いので遮音性もあります。
人体への影響はグラスウールより少ないのです。
建築はこうした多面的な考察、つまり
経済性、機能性、快適性、空間性、安全性、・・・などの
集合なのです。
それらを組み合わせ、さらに住宅の場合にはそこに住む人々の
「生活」を満足させ、将来的な生活予測も踏まえて設計するからこそ
設計事務所の役割は大きいと考えます。
(もっともここまで考えられる設計事務所は少ないのですが・・・)
建築資材のパンフレットはあくまでも商品の販売が目的です。
建築工法のパンフレットはあくまでも商品の販売が目的です。
それらを使った建設会社のパンフレットも「住宅商品」の販売が目的です。
彼らは他者との差別化を図って自己の商品の優位性を販売しているのです。
さて、あなたの住宅建築には何が必要で、何が不要なのか?
もう一度違った角度から考察されることをお勧めいたします。
目的に合った選択肢の並べ方を間違えているように思います。
間違った情報に惑わされないことが高額商品購入の第一優先順位です。
それより何より設計事務所を味方にされることをお勧めします。