質問
小杉様ホームページを拝見しました。素晴しい作品の数々で大変に感激しています。本日ご連絡させていただいていますのは、私の実家の建て替えの件です。両親も高齢化で、70代で今のところまだ現役ですが、この春より非常勤になりますのでこれを機会に彼等の住宅の建て替えを検討したく思っています。
私はニューヨーク在住で、つい先週弟もニューヨーク勤務から日本へ戻りました。 父は英国で生まれ、海外生活の経験(4年前までボストン)で母も若い頃ニューヨークでインテリアデザインの勉強をしておりましたので古きよき、米国東海岸の町並みニューイングランドスタイルを好んでいます。現在は30年前に町大工の建てた家を増築して2世帯住宅にしています。2階は弟の家族が住んでいます。また30年前から父の1番の憩の場は地下室の書斎です。
しかしながら素人の町大工の建築でここ30年は湿気とカビとの戦いでした。場所は、港区●●で、最近は●●のビル、その他の集合住宅の街並みですが、まだ高さ制限があるので中高層への限界はあります。敷地は約130坪で、(中略)残りの敷地80坪強に以下の希望を満たした集合住宅が建築できないでしょうか?希望は、
1)3世帯住宅+ワンルーム(ゲスト用でバスルーム、キチネット完備)、
2)地下車庫に3台の車を収納 (家の前の6m道路へは4メートル道路のアクセスがあります。
3)父用にかび、湿気なしの地下書斎、
4)弟夫婦の収入、父の収入に限界があるので低価格の設計、建築費、
5)130坪の敷地内に4世帯が入るので、各家間のプライバシーを守備、
6)近代的な内装、外装ながらもニューイングランド風の外観で前の家との調和を保つ借家の建築を希望します。
以上長々と書きましたが、小杉さんのご意見をいただけましたら幸いです。
回答
<はじめに: この回答はご相談のあった1999年3月に
すでにご相談者あて回答したものですが、
当相談コーナーのシステム改善の都合上、
再度編集して掲示しております。ご了承ください。>
ご実家の建て替えの件了解しました。
記憶が約15年ほど前なのでそれほど詳しく記憶にとどめておりませんが
ご実家のある場所の2、3軒お隣に瀟洒な洋館があリましたが今もありますでしょうか。
ちょうど「●●研前」から北西に伸びた道の正面にその洋館はありました。
漆喰の外壁に石が張ってありシッカリした建物でした。
車が一台ほど入れる玄関アプローチにはソテツの木が
植えてあったように思います。
窓には菱クロスの格子が入っており
暖炉がどの部屋にもついておりました。
また、三叉路の角はマンションであったように記憶しています。
以前「日本●●」にお勤めでしたドイツの方と
偶然ご実家近くにある坂の途中の「ビストロ・●●」という
レストランで知り合いまして、プライベートの時間を共に楽しむようになり
パーティーやスキーをご一緒したことがあります。
5年ほど滞日し、日本人の女性とご一緒にドイツに帰られました。
もう15年から10年前の出来事なので
少しづつ記憶が薄れていました。
メールを頂いて、ご実家の住所を確認したところ
懐かしい住所に記憶が少しよみがえり、
家内と共にあの頃を思い出しました。
ありがとうございます。
さて、ご相談への回答ですが、
>敷地は約130坪で、今年に入り正面の40坪を分筆登記して融資を得て
>ニューイングランド風の注文住宅を、今後の彼等の生活の為に家賃収入を
>目的として建築中です。奥の現在の2世帯住宅を今後3世帯住宅にして
>1世帯を賃貸として家賃収入を得て建築ローンの返済を考えています。
この文面からですと建て替えを計画したい建物は「奥の」建物を解体し、
この位置に3世帯+ワンルームをご計画なさりたいということでしょうか。
「奥」という位置関係が分かりにくいところではありますが
この従前の土地は分筆した土地以外に道路が接続しておりますでしょうか?
>家の前の6m道路へは4メートル道路の
>アクセスがあります
この位置関係が意外に重要だったりします。
また、
>残りの敷地80坪強に以下の希望を満たした集合住宅が建築できないでしょうか?・・・
ご相談の「集合住宅」は住宅でありながら「集合」による法律的規制が
かなり厳しくなります。
防火・防災上の規制が主体となりますが
マンションを建築するのと大差ありません。
「東京都」・「区」の制令に準じなければならずこうした行政庁との
事前打合せは欠かせません。
また、重要なことが一つあります。
それは多世帯住宅の特徴といえるものですが・・・
多世帯住宅の場合は戸建て感覚のご希望を
それぞれのお施主様から同様にお受けしなければなりません。
実はこれがワンオーナーの設計対応とは違い
設計側に大きなキャパシティーを要求するところとなります。
基本的に私はこの「キャパシティー」に乏しく
同時に3者のお施主様に対応することが
おそらくできないのではないかと思われます。
「一建物で3者の施主」は一見、採算性や効率面では良いように
思えますが、これはロジカルな部分でして、
メンタルな部分は実に複雑に、難解になってしまいます。
今までの経験ではこれは2世帯、3世帯、4世帯と
世帯数が増えれば増えるほど世帯間でのご希望調整が
複雑になりご不満も益々鬱積していくこととなってしまいます。
問題解決の事象が倍加する「住まいづくり」になってしまいます。
いずれにしましても、調整とは妥協点を見出していくことでして、
解決を図るにはこの「妥協」というところへ導くしかないのです。
しかしながら、厄介なことにこの「妥協点」には個人差がありまして、
当事者の数がご夫婦だけなら良いのですが、2者さらにはその家族、
3者さらにはその家族となっていきますと「妥協点」が集約できずに
どんどん発散する状況となり、「妥協点」を見出しにくいというのが
経験で解かってきました。
というわけで、私は常に
「お客様に満足をいただくことが自分の満足」を宗としておりますが、
今回の場合はあちらこちらにご不満を残してしまう気がしており、
結果として「良い建物」に仕上げる自信が見出せない
というのが正直なところのように思います。
せっかくのお話ではありますので、もしも、
なにか私を勇気づける材料をお持ちでしたら
ご提案いただければ次のステップも可能かと思いますが、
現状はこうしたお応えになってしまいます。