<はじめに: この回答はご相談のあった1998年9月に
すでにご相談者あて回答したものですが、
当相談コーナーのシステム改善の都合上、
再度編集して掲示しております。ご了承ください。>
こんにちは YI さん メールありがとうございます。
ご質問ありがとうございます。
さっそくながら「断熱」の考え方についてですが、「断熱」は熱の貫流を最小限に押さえるのが目的です。
ですから、理論的には断熱すればするほど外気温と内気温に
温度差が生じてしまうことになります。
エネルギー損失の面から見れば「断熱」は必要なのですがこの温度差の作用の中に「水蒸気」が入ってくるところが問題です。
「水蒸気」を無視した状態で「温度差」による熱貫流抵抗だけで「断熱」を考えられれば日本の住宅は問題点が整理されやすいと思います。
目には見えない「水蒸気」という厄介な要因が日本の気候という事象の中で自然発生し、これが室内外において悪さをするところからこのところ問題視されるようになってきています。
実はこの「水蒸気」が「水滴」になったものが「結露」です。
「結露」は上記外気温と内室温の差によって、
夏場では冷房をかけ過ぎた室内と外気温が高いときに「温度が高い外気中の水蒸気」が露点に達するとこの「結露」が生じ、
冬場では暖房をかけ過ぎた室内と外気温が低いときに「温度が高い内気中の水蒸気」が露点に達するとこの「結露」が生じます。
いずれも温度差のある暖かい側の面に水蒸気が存在することで発生します。
理論的にはこの「水蒸気」がなければ「結露」は発生しません。
それは「飽和水蒸気状態」となるので「結露」現象が起きるからです。
「飽和」状態にならなければ「結露」は生じないのです。
日本国内では水蒸気量は少なくすることは機械力によって可能ですが、ゼロにすることは出来ません。
この水蒸気量の強制的な低減を「除湿」といい、この「除湿」をする電気的な機械を「除湿器」といいます。市販品では3万円から5万円程度で求めることができます。
さて、上記では「断熱」の必要性をいいましたが、最近の建物はこの「断熱」がかなり進化向上してきたので、過去の建物での「室内外温度差」以上に室内と外気温の差が大きくなる結果になってきました。
昔は現在の建物ほど断熱性能がよくなかったので「室内外温度差」は現在の建物ほどではなかったといえます。
したがって、最近の建物の場合には多少の水蒸気量でも「結露」が生じる結果となります。
一般的には断熱上弱い(熱貫流が多い)開口サッシのガラス面などに多く結露が発生することになります。
だんだん理解されてきたと思いますが、もっとも問題なのは「水蒸気」なのです。
この水蒸気が「家」を病気になりやすくしているのです。
といって水蒸気がないのも困ります。乾燥しすぎてしまいますから。
実はこの水蒸気は建物が潜在的に持っているところにも注目したいですね。
たとえば地盤、基礎コンクリート、木材、繊維系断熱材、建材、左官材など水分を含むものはほとんどです。
最近、基礎工法が変わってきたのはここから派生しました。
建物基礎全面にコンクリートを打つ「ベタ基礎工法」は地中の水蒸気の床下への発散を抑えたものなのです。
建築以外でも生活する「人間」だって水蒸気を発生しています。
また、家電品で「火」を使うものもそうですね。
つまりお料理をしても湯気が出ますし、灯油やガスストーブといった暖房機器は灯油やガスが燃焼するときに化学変化を起こして「水」を発生させています。
酸素(O2)と水素(H2)があれば水(H2O)が発生するからです。
この「水蒸気」を押さえるにはどうしたらいいか。
上記の「直火型暖房機器」は使用を控えることは賢明です。
後は建築で解決するしかありません。
それも総合的にやらねば解決できないと考えております。
それが私の設計の各所に盛り込まれて実例となっております。
それぞれのお客様からは「快適」というご報告もいただいております。
外断熱も、内断熱も、通気・通風も、除湿も、採光もましてや上記「地盤・・・建材・・・」などの選定も、このように考え出されます。
限られた予算の中でのコスト管理もしながらこうしたことを
総合的に設計することが重要と考えております。
ご質問の各種工法については上記回答をもってお答えといたします。
よろしくお願いいたします。