今日も検査員の仲間が集まって日頃の検査指摘内容などについて話し合った。
この中で話題に出たのが『ハウスメーカーや工務店などビルダーを提携先とする下請け設計者の現場での無知ぶり』だった。
設計工賃を安く設定できる魅力がハウスメーカーや工務店などビルダーには昔からあって、設計工賃が安い下請け設計者に依頼するケースがほとんどだ。
ここで問題となるのは『現場を診たか?』である。『診た』であって、『見た』や『観た』ではない。
事実関係はお手持ちの設計図に記載された設計者に直接連絡を取ってみると判る。
ほとんどの現場には現場監督や大工の棟梁がいるくらいで『設計者』は顔を出していない。
これはビルダー側が『監理』を軽視していて「監理はしなくてよい」、「設計と確認申請だけでよい」という発想に基づく。
ビルダーサイドとしては“安い建売住宅に監理料など払えない”という『無駄』としての意識があるのもこれを助長している。
なので下請け設計者は現場監理を行えない設計を繰り返す。つまりは、『現場を知らない』体質になってしまうのである。
実例を挙げれば、
1.鉄筋の組み方のチェックができない。(配筋検査)
2.建築金物の取り付け方のチェックができない。(金物検査)
3.防水の納まりのチェックができない。(防水検査)
などということが多くの若手設計者には多い。
こうした建物を購入するのは一般のお客様なのだが、なんと恐ろしいことだろう。
販売や建築サイドのビルダーを信じることも必要だから顧客窓口に立つ営業マンの口上も大事な部分ながら、
本当に大事なことは 『設計監理系の第三者検査』なのだ。
事実として、多くのビルダーもビルダーサイドの設計者も正当な検査が機能していません。
例の姉歯の一件を契機として、2007年6月20日の建築基準法の改正および建築士法改正によってお客様の財産を守ることが重要と認識され始めている。
が、現場での検査チェックの実態は上述のごとく軽視された状態が続いており、改善されない体質はまだまだ根深く、ビルダーサイドの儲け主義的経済観念と下請けとしての設計者の弱体的監理に今なお押され続ける事態は未だ変わっていません。
いったい誰のために建築基準法改正、建築士法改正だったのかが今後も問われていくこととなりそうです。
しかして、この実態を受け入れることも本筋から離れるところであり、一般の住宅購入者や住宅建築主および住宅にとどまらず、ビルやマンションや工場や各種施設のオーナーにあっては、『建築現場検査』を別途実施されることをお奨めします。
このあたりはお客様がもうひとつ賢くなって、わたしたちのような経験豊富な『建築現場検査員をピンポイントで投入』することが今後は必須となります。
cosugi : 2008年06月30日 15:08