事故のあった杉並区の小学校の屋上に設置されている複数のドーム型天窓には小学生の足跡が確認されたという。
破損・転落の危険性があるにもかかわらず、何故、この天窓に彼らは乗ったのだろうか?
実は複数の小学生はこれまでに何度か乗ったことがある?
推測の域を出ないが私はこう推測する。
彼らはどこかでこの“同じようなドーム型の似たもの”に過去に乗った経験があると考えると不思議ではない。
それは何か?というとたとえば、立川市にある昭和記念公園内の“こどもの遊び場”にある『ふわふわドーム』だ。
この『ふわふわドーム』は樹脂性シート膜の中に空気が送り込まれてドーム形になったトランポリンのようなもの。
全国のあちこちにあって、子供たちがこのドーム型トランポリンの上に乗って飛んだり跳ねたりできるというものでクッション感覚を楽しむものだ。大人の私が体験してもかなりの浮遊感が味わえる。複数の子供が飛び跳ねあうのでシーソーのように圧縮力と反発力のタイミングが合うと子供でも2mくらい浮遊することができる。これは子供にとって異次元体験となる。
似た体験では、よく子供たちがソファーやベッドの上で飛び跳ねるあの感覚なのだが、ドームの大きさの違いや反発力(硬さ)の違いはあるものの、今回のドーム型天窓とこの『ふわふわドーム』の外観は似ているから、子供の認識の違いを差引いても、“乗れるもの”という誤認は避けられない。
杉並区の小学生ということからすれば、この複数の子供たちは立川市の昭和記念公園のこの『ふわふわドーム』を遠足やピクニックなどで体験し、皆で乗って一緒に飛んだり跳ねたりして楽しかった記憶を持っているのではないだろうか?
つまり、彼らの認識には“白いドームには「乗れる」”という認識があって、建物完成後から複数の子供たちによって「乗れる認識」が伝承模倣されてきたことが考えられる。
新品のドーム型天窓はある程度の積載荷重や衝撃荷重には耐えられるはずなのだが、今回事故のあったドーム型天窓はアクリル樹脂でできているので、太陽光の熱や紫外線によって強度劣化はかなり進行しており、不運にも子供の荷重や衝撃には耐えられなかったと考えられる。
そもそも、こうした天窓には人が乗る想定はないのだが、子供の想像は前述のような誤認も含めれば無限であり、小学校のような児童施設には想定以上の安全策を講じておく必要はある。
また、どんな建物にせよ、安全性をはじめ劣化や漏水などの点検は必須であり、各部の点検は私たちのような建築士が利害を超えて点検していくことが好ましいと感じる。
cosugi : 2008年06月19日 16:03