コンクリート地下室の設計監理を手掛ける私は「コンクリートのひび割れ」については何かよい技術対策がないものかをずーっと探ってきた。
これまで、コンクリートは密実に打設することが重要であることを命題に、多くのコンクリート建造物(地下室なども含め)を設計監理してきたが、未だ「ひび割れ」が生じないコンクリートは打設できずにいる。
ただし、「ひび割れ」といっても100μm(マイクロメーター)=0.1mm程度のものである。
つまり髪の毛程度の太さのひび割れは必ずと言ってよいほど生じてしまう。
多方面のコンクリート技術者に聞いても改善できずにいた。
有名な某コンクリートコンサルタントと一緒に仕事もし、対策もそのコンサルに従ったが、スランプ8cmにするなどいろいろとひび割れ防止策を講じたが、結果は「ひび割れ」を生じた。
そんな中、今回は広島大学工学部 都市デザイン工学科の十河(そごう)茂幸主任教授の講演会があり、興味津々で参加した。
十河教授は明石海峡大橋や、LNG地下式タンクなど難易度の高い施工の技術支援を多数行っている方である。
主催は一般社団法人東京都建築士事務所協会賛助会員会ということもあって会員限定になっているのでそれほど多い参加者ではなかったが、講演では目から鱗の話が続いた。
講演内容でもっとも興味深かった内容は、『「ひび割れ」は防ぐことができず、どのようなコンクリート構築物でも必ず入る』という。
なんと、十河教授によれば大きいひび割れは400μm=0.4mmは普通に入るという。
その話に私は「え、エッ!」と唖然としつつ、ある意味、安堵している自分がいた。
確かにそのメカニズムを聞けば、納得がいった。
それはコンクリート自体の特性にあったのだ。
コンクリートは水とセメント、砂、砂利を混ぜ合わせる化合物ながら、そのほとんどが自然の中にある物質である。
だが、その中でセメント成分にある「ケイ酸系物質」と「カルシウム物質」とが化合することにより「水和熱」が生じて、その水和熱の温度変化がこの「ひび割れ」に作用していると説明された。
結果、その水和熱をいかに低減するかがその対策のヒントになることを説かれ、コンクリート発注時の配合計画がいかに重要であるかを力説された。
この力説にあるコンクリートの配合計画は、これまで弊社が行ってきたことにほかならず、単位水量やセメント量や骨材量などの設計が正しいことの裏付けとなった。
世の多くの現場ではこうしたコンクリートの配合計画に重要ポイントがあり、その配合計画を指示するのは設計者でありながら、その配合が判っていない設計者が多いことか!
コンクリートは型枠の中にただ流し込めばよいものではない。
1立米13000円もするコンクリートなのだから、きちんと発注しなけらばならないし、技術的なこととして『打設』がいかに密実に打設されるかを工事監理者として指導しなけらばならない。
今回は弊社の技術に対してとても有効で、これまでの技術的裏付けとなる講演会であった。