これまでに約33年に渡って住宅地下室を作ってきたが
常水面が浅い地下室は久し振りである。
先日工事した地下室の常水面は地表から約2.4mとかなり浅いもので
かなり難儀した。
何故なら水中での作業は何もできないからである。
画像にあるように、職人さんが腰まで汚泥に浸かってしまい
身動きが利かない状態に!
危険を察知し工法の再検討をすることになった。
現場で地下水が出ることは、よく見る医学的な手術の現場に似ていて、切開された部分に
大量の血液が噴き出てしまうと施術部分が見えなくなると同時に
血の海の中では施術自体ができない。
よって、血液をバキュームしてかつ止血して施術部分をきちんと露出して施術するわけだが、水中地下での工事も止水処置を施しながらかつ湧き出す水をバキュームする方に水中ポンプで汲み出しながら工事を進めていく。
だが、現場には人体以上に厳しいものが介在する。
それは土の組成であり、その深さである。
一般にその土の堆積は「地層」と呼ばれるが、太古の昔から地球の形成活動により年輪のごとく重なり堆積したもので、圧縮耐力や粘性はあるものと圧縮耐力や粘性がないものとがある。
耐力や粘性はその土質によって変わるし、水に介在によっても変わってしまう。
そこが人体における手術とは大きく異なるところである。
具体的に言えば、砂質地層が水とともに出現すると工事の事情は一気に難航化する。
それは海水浴場で砂遊びをした過去の思い出の中の光景に等しい。
特に、波打ち際に作った砂芸術がいとも簡単に波にさらわれ瞬く間に形を失うことで理解できるし、砂山に棒を立てたその根本を波が寄せる時にその棒が倒れることでも理解できる。
つまり、砂質地盤で水が関与し出すと砂質地盤は途端に豹変し突然不安定化し始める。こうなると場内は人が立ち入ることすらできない!
さーて、困った!
が、至難の局面はこれまでの経験から打開策を導き出す。
限られた予算の中でやらねばならぬことは、いろいろな識者から意見を聞き、それらからいくつかの解を導き、見積もりを得てさらに選択肢を狭めていく。
特定の専門工事会社に絞り専門的な打合せを重ね見積額も交渉し的確な工事を任せていく。
最終的には失敗はできない、いや失敗はしないという確信を持ってチャレンジすることとなった。
結果は時間こそ掛かったが、費用もあまり膨らまず次の工事を迎え、水中地下室は完成することができた!
手術は無事に成功したといえる。
試練に感謝!
次の現場が楽しみである!